14章 転調
調を変える心理的必要性
静的な調性......ある楽曲にただひとつの主音があり、維持される調性。
転調......ある中心音から別の中心音に変化する過程。調性の動的な状態を表す。
主調......その曲の主となる調。
転調は音楽に多様性をもたらすものだが、複数の調のバランスが主調を支える場合、それは統一性ももたらす。
基本的な関係:3つの段階
転調をもたらす3つの段階
1.調性が聴き手にとってあらかじめ明らかである
2.ある時点でその中心音が変化する。
3.聴き手が変化に気付き、新しい中心音が確認される。
軸和音......転調する際に使われる、両方の調に共通する和音。
これは、両方の調で単純な機能を持つ和音であることが望ましい。
(「転調するフレーズの実例」は説明が譜例に依存しているので割愛)
転調のレベル:トニック化と中継的転調
トニック化......2次ドミナントなどによって、瞬間的に現在の主音以外の音を主音とすること。
最初の調は、それゆえ調的に特別な強みを持つため、転調先の調はそれと対抗しなければならない。
中継的転調......次のフレーズの始まりで原調に戻る転調。
延長されたトニック化は直後に原調へ戻る転調だが、中継的転調は次のフレーズまで復帰を遅らせる。
転調の連鎖
転調の連鎖......主調からの転調の後、復帰を挟まずに第3の調へ転調すること。
経過的転調......強いカデンツでトニックを確認しないまま行う、連続的な転調。
関係調......普通は、5度圏上でもっとも近い調を指す。
旋法の交換
同主長調・同主短調への変化は旋法の変化であり、転調ではない。
旋法の混合......和声進行が両方の旋法の和音を含むこと。
比較的遠い関係の調に転調するとき、軸和音の選択肢を増やすことができる。
手段の探究
転調に使う2つの調性が決まっているとき、そこで使う軸和音は慎重に選ぶべきである。
与えられた2つの調に共通する和音を探し、その中からもっとも効果的であると思われる物を使う。
(「異名同音的変換」は記譜法の話なので割愛)
唐突な転調
それが唐突に聴こえても、ほとんどの転調には軸和音が存在する。
このような場合、転調する箇所の和声進行を説明することで、唐突さの度合いを明らかにできる。
調の移動......理論的に軸和音が認められたとしても、それを実際に軸和音として聴くことが出来ない場合の転調。
半音高い調への半音階的な移動が慣用的である。
軸音......軸和音の代わりに単声で転調をもたらす音。代理する前の和音は主3和音であることが多い。